Difference between revisions of "UO:2001-12-21: Revenge"
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The Juka seemed trapped between a frown and a laugh, but he answered by lifting his bloody spear in an abbreviated form of salute. | The Juka seemed trapped between a frown and a laugh, but he answered by lifting his bloody spear in an abbreviated form of salute. | ||
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+ | ミーア(Meer)の軍隊が第二の夜明けのように光り輝きながら、ジュカ(Juka)の都市を見下ろす形で現れた。山の頂上を幾つも越えて、彼らは目映い魔法の後光を纏いながら、複雑に入り組んだこの土地まで膨大な数で静かに、そして確実にやって来た。隆起線から彼らは眼下にある谷を覗った。そこには巨大な要塞に囲まれたグレーの屋根が幾つも見えた。ミーアの集団の輝きの中で、それらの建物は随分と小さく見えた。吹く風は、この夜行性の侵略者に萎縮し、その谷を陰気で静粛な物へと変えた。 | ||
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+ | しかし、暗黒の軍隊も又、山脈の基地へと集結していた。軍勢に於いてジュカはミーアの六倍あり、それが険しく、高くそびえ立った崖を通る山道に押し寄せながら、都市と斜面との間にある平地に集結していた。無数の盾と槍は戦闘準備を完了していた。カタパルトが弓矢部隊の中心に据えられた。軍旗がジュカの戦いへの飢えの証として、朝日の中で誇らしげに輝いた。 | ||
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+ | 谷の静粛さは、ジュカの軍が囁き、声を出し、そして攻撃開始の前に躊躇っている臆病なミーアに対する苛立ちの怒声をあげるにつれて消え去っていった。 | ||
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+ | ダーシャ(Dasha)は頂上から、彼らの戦闘意欲の旺盛さに薄笑いを浮かべた。ジュカはその生来の野蛮な性質を越える理由で戦いをした事などなかった。彼らの熱意は子供っぽさと言う点に於いて惹きつけるものがある。しかし、子供と同じで、彼らはその敵を自分達が作り出した事を理解しないのだった。ミーアは光り輝く嵐のようにして彼らを悩ます事になるであろう。復讐は満足をもたらすであろう。同様に陰鬱な気分ももたらすであろう。彼女は罪の無いジュカの死を嘆く事になるであろう。しかし、彼らはミーアからより大切な何かを奪ったのだ。彼らは自分達自身に嵐を呼び込んだのだ。 | ||
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+ | 彼らは黒幕の手先であるに過ぎなく、彼ら種族の滅亡を意味しない事をダーシャは祈った。エクソダス(Exodus)こそミーアの真の敵だった。今日、彼女はそれを戦火の中で証明するつもりだった。 | ||
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+ | 彼女はジュカが戦闘配置についた事を確認すると、腕を上げ呪文を放った。金色の光線が空に撃ち込まれた。それは、ミーアの第一陣への合図だった。 | ||
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+ | 永きに渡り山々はミーアの本当の親友として数え入れられてきた。天上の先祖達は他の世界からは隠された水晶の秘密を共有してきたのだ。ジュカがダーシャの故郷である森を破壊した時、歓迎してくれる大地の下へ避難したのだった。そして今、彼らはその古代からの同盟をもう一度求めた。山々は岩の唸りを以ってそれに応えた。 | ||
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+ | 崖が揺れた時、ジュカは静まり返った。そして、巨大な厚い岩の板が山道の上の方で崩れる音がした。巨岩や瓦礫が頭上に打ちつけられる。彼らは引く潮のように逃げた。巨大な岩の柱が山の側面から剥がれ落ち、雷鳴のハンマーのように崩れ落ちた。土埃の雲がジュカを包み込み、その攻撃はこだまの中へと消えていった。 | ||
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+ | 彼女はその土埃が納まるまで静かに見ていた。ジュカの軍勢が地滑りの後の隅に集まった。その数は四分の一ほど削られていた。 | ||
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+ | 猛烈な怒りと共に、彼らは再びミーアに挑むべく向かって来た。 | ||
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+ | 攻撃の第二波は最初のそれよりも大きな物になった。大地はジュカの足元でそれが隆起する度に大きな音を立てた。崖も崩壊の音をたてていた。一瞬にして地震が巨大な池の波紋の様に谷底全体を揺るがした。深い裂け目が大地を切り裂き、ジュカやその建物を飲み込んだ。都市の断片は埃と瓦礫の渦の中へ消えていった。ジュカの編隊の遺物は混沌と死の中にまき散らかされていた。 | ||
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+ | そして、崩れた大地の裂け目から、谷間中を満たしていく多くの黒い雲が吹き出した。余りの自らの有利さに、ダーシャはたじろぐ程だった。今までの攻撃の中で最も凄惨なものだった。長老達は針を持つ昆虫の群れを召喚した。その毒液は毒矢の様な効力を発揮した。それらもまた森から避難してきた者であり、それ故に怒りも倍して凄まじいものだった。ダーシャはジュカが一人としてそれらの怒りから逃れる事は出来ないと知った。 | ||
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+ | 彼女は廃墟となった街から叫び声や煙がたち上がって来た時、目を閉じた。 | ||
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+ | しかし、彼女は深呼吸をして心構えを新たにした。ジュカの街に進軍し、その朝の仕事を終わらせる時がやって来たのだ。都市とその砦はすぐに陥落するであろう。彼女がその巨大な要塞に目を遣った時、要塞の壁に殆どダメージがない事に気が付いた。呪術が地震からそれを守った事は明らかだった。目を細め、彼女は思った。そこに居るのだな、エクソダス。 | ||
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+ | 彼女の周りでは、ミーアの軍勢が山の斜面を駆け降りていた。彼らの歩みはとても静かな物だったので、不安定な足場も危険ではなかった。高く積まれた瓦礫の傾斜の向こうから、荒涼とした戦場への侵入路を作りながら地滑りが起った。戦士の使う魔法の輝きが谷全体を魔法の輝きに浸した。昆虫の軍勢もやって来る光にたじろいだ。 | ||
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+ | 血まみれで混乱をきたし、毒に侵され破滅寸前のジュカの戦士達は侵略者達を不屈の獰猛さで迎えた。両軍が戦争の叫びの混沌とした中で衝突した。その一日が終わる前に大地はより多くの血に浸される事になるであろう。 | ||
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+ | しかし、ダーシャは仲間の前進に加わらなかった。彼らの目的は都市の中心に至る道を確保する事だった。一旦それが完了すれば、長老達が谷に入り、とどめの一撃を放つであろう。師アドラナス(Adranath)はジュカの敗北を決定づける古代の儀式を準備していた。それが実行されればミーアへの脅威は終わるだろうと、年老いた魔術師は請負った。 | ||
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+ | ダーシャはアドラナスが考えるよりも、ジュカに希望を持っていた。彼女はどうしてもジュカが永遠に葬り去られる事を望んではいなかった。少し前に彼女は、彼が岩だなから戦いを見ている時に、彼女のその申し立てをその魔術師の前で明らかにした。一礼し、彼女は小さな声で言った。『敬愛する我が師よ、お願いです。私がエクソダスに辿り着くまで、あなたの呪文を延期してください。もし、我々が奴の影響を取り除く事が出来れば、私はジュカが彼らの正しい役割に立ち返ると確信を持っています。』 | ||
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+ | その老人はうめくように呟いた。『今日、ジュカの終焉を目撃する事になるじゃろう。』 | ||
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+ | 『彼らは既に罰されています。自らを癒し省みる為、エクソダスの支配から解放されるには十分な程だと思います。種族間の均衡は・・・』 | ||
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+ | 『我々は多くの民を失った!古からの均衡はその存在を終えたのじゃ。残ったのは復讐だけじゃ。』 | ||
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+ | 彼女は声の調子を下げ言った。『恐れながら、私は絶対に同意できません。』 | ||
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+ | アドラナスは顔をしかめ、それは彼女に冷水を浴びせた。『お前の目がお前の先入観を物語っておる。私の思考は乱れ、年齢が私の智慧を奪ってしまったと思っているのじゃろう。しかしな、キャプテン・ダーシャよ、私に年を経る事の理と言う物を語らせてくれ。智慧と言う物は経験の産物じゃ。智慧は変化の必然性を重んじる。しかし、若者は築き上げられた秩序や習慣しか知らず、それ故お前は変化を受け入れる事を躊躇っておるのじゃ。これこそ、若い者が転生の輪に取り込まれてしまう理由なのじゃ。お前の魂はまだ、自身に恃むだけの自信は持ち合わせていないのじゃ。』彼は否定を表す様に溜め息をつき、彼女を見つめた。『過去への執着を捨てよ。ジュカはかつてのジュカではない。我々もまた然り。今、古の秩序は終わるのじゃ。』 | ||
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+ | 彼女は己の確信は捨てていなかったが、その年老いた魔術師に何も言えなかった。ジュカは望みが無い状態ではない。もし、彼女が単に若輩で頑固なだけならば、先祖達は彼女を然るべく評価したに違いない。彼女はアドラナスの凝視に耐え得る力を呼び起こし、言った。『何か他の命令をなさらないのであれば、私はエクソダスの下へ参ります。もしアドラナス様が呪文を唱える前でなければならないなら、どうか私の思う様にやらせて下さい。』 | ||
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+ | そのグレーの獣毛を身に纏った長老は耳を細かに動かした。そして、眉をひそめて呟いた。『我が子よ、為さねばならぬ事を為すが良い。お前の魂の行く道は実に悲しいものとなるであろう。お前は、いつかは偉大なリーダーとなったじゃろうに。』 | ||
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+ | 『やがてはそうなりましょう、我が師よ。』 | ||
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+ | アドラナスは重々しい表情で彼女の強気な言葉を無視した。ダーシャは高尚な先祖達に祈りながら山腹を駆け下りた。:彼の地に根差した魂は憂鬱さに支配されてしまいました。ですから、師アドラナスを貴方達の列にすぐにでもお迎えください。来世において、クリスタルの尖塔が彼の活力を回復できるかも知れません。 | ||
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+ | 彼女は傾斜地にある基地で、五十人ほどのジュカ戦士の一団に出くわした。彼女はジュカの都市が1時間前にそうだったような騒々しい恐怖の中へと彼らを叩き込んだ。大地は所々隆起し、亀裂が入り、建物は燃えながら倒壊し、刺の立った昆虫の被害者は腫れ上がるその痛みに泣き叫んでいた。それでもジュカの戦士は戦い続けた。彼女の遭遇した戦いは、速く、残忍な物だった。彼女が要塞の壁に到着する前に、彼女の通ってきた道には二百人のジュカ戦士が動かぬ者となって横たわっていた。彼女の仲間の一団も同様に倒れていった。 | ||
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+ | それらの前に巨大な要塞がぼんやりと見えてきた。その石垣はその日の悲惨な出来事の面影を殆ど残していなかった。彼女はその高い壁を上る為に戦士を集めた。彼らの魔法は胸壁の守備に就いているジュカの矢を振り払いながら、戦乱の煙の中で今だ光り輝いていた。ミーアが登り始めると、他の光が出現した。ダーシャはその呪文が何なのか解らなかった。エクソダスよ彼女はにやりと笑った。その中だな!だが、何を仕掛けている?その光は谷全体を包み込むかの様だった。彼女は背骨に何かが刺すような痛みを感じ、その魔法がもたらすかも知れない効果に身構えた。谷が光り輝いているのではなかった。彼女だった。その呪文は直接ダーシャに向けられたのだった。 | ||
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+ | そしてしばらく経って、彼女は要塞の中ではないかと思われる部屋の中に立っていた。ジュカ戦士の輪が、槍で彼女を床の中心に閉じ込めながら、彼女を取り囲んでいた。彼らはその中にいる最大の戦士を除いては、地震や昆虫の被害を受けている様には見えなかった。ウォーロード・ケイバー(Warlord Kabur)は前線からここに戻って来たに違いなかった。彼の鎧は地滑りの土埃から色褪せていた。彼のエメラルドの肌は怒りの刺激からかつての色彩を欠いていた。血が彼の強健な体格を彩っていた。ダーシャはそれがジュカの血でない事を知っていた。 | ||
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+ | 『ここまでやって来るとは気でも狂ったのであろうな。』その巨大戦士は怒鳴るように言った。 | ||
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+ | 『お前の名誉の為にここにいるのだ。』彼女は応えた。『お前が洞窟で私に武器を残していっただろう。お前が私に命を与えてくれた事には感謝する。それに、おまえがこの部屋へ私を引き込む魔法を放ったのではない。お前の主人エクソダスはどこだ?用があるのは彼だ。』 | ||
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+ | 『私はここにいるぞ。』重厚な声が轟いた。それは奥の部屋の影から聞こえてきた。ダーシャは数個のジェムストーンの火花を除いて、その暗闇の中を覗う事は出来なかった。『非礼な招待をお詫びする、キャプテン・ダーシャよ。しかしどうも今日は忙しくてな。』 | ||
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+ | 『お前はきっと私がここに来た理由を知っているであろう。お前がジュカを侵食した。私は我々と、そしてジュカとの間の古からの均衡を回復させるつもりだ。』 | ||
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+ | 『ふむ、お前はジュカを救わねばならぬのであろうが、お前の欲している標的は私ではないぞ。お前の師であるアドラナスの手によって空前絶後の裏切りが進行中なのだぞ。彼も同様に均衡の回復を希求している。彼が実行しようとしている儀式は、イルシェナーからジュカを消し去るであろう。そしてキャプテン・ダーシャよ、ミーアもそれと同じく滅びるのだ。アドラナスは双方の種族にとっての忘却と言う安定を求めているのだ。我々全てにとって時間と言うものは短いものだな。』 | ||
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+ | 彼女は、エクソダスがアドラナスの絶望の本質を言い当てたので、彼が真実を語っていると思った。そして今、知識の師の言葉を理解した。残されたのは復讐あるのみじゃ。彼女は体全体が凍りつくような狼狽に襲われた。老魔術師は本当に気が変になっていたのだ。そして、彼女が彼を止められる唯一のミーアだった。 | ||
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+ | 彼女の口調は鋭く低かった。『畜生、魔術師め、こんな事を押し付けやがって!だけど私には助けが要るんだ。来い、ウォーロード・ケイバー。ミーアの長老に立ち向かう勇気があればの話だがな。』 | ||
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+ | そのジュカはしかめ面と笑い顔との間で態度を決めかねているように思えたが、彼は略式の礼を以って血のついた槍を手にとり応えた。 | ||
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Latest revision as of 09:25, 31 May 2017
Note: This is part of an overall story titled 'A Tale of Revenge' which was written to introduce the Lord Blackthorn's Revenge expansion.
- A Tale of Revenge
- Chapter 1: Beginnings
- Chapter 2: The Challenge
- Chapter 3: Clash in the Darkness
- Chapter 4: The Beast
- Chapter 5: Revenge
- Chapter 6: Inferno
- Chapter 7: Change
- Chapter 8: The Watcher
The army of Meer rose above the Jukan city like a second dawn. Over the crest of the mountains they came in mighty numbers, silent and sure on the jagged terrain, resplendent in a halo of magical light. From the ridgeline they surveyed the valley below, where a field of grey rooftops surrounded an immense fortress. The buildings seemed small in the radiance of the gathering Meer. The wind itself shrank from the luminous invaders, turning the valley somber and still.
But a darker force collected at the base of the mountain range. In troops the Juka outnumbered their enemies six to one, massing in the fields between the city and the slopes, swarming the passes through the steep, towering cliffs. Countless shields and spears stood ready. Catapults squatted amid a legion of archers. Standards flashed proudly in the morning sun, in testament to the Jukan hunger for battle.
The stillness of the valley faded as the Jukan army murmured, then rumbled, then roared its impatience at the cowardly Meer who hesitated before attacking.
From a high peak Dasha smirked at their exuberance. The Juka had not risen far above their savage roots. Their zeal was endearing in a childlike way. But like children, they did not comprehend the enemy they had wakened. The Meer would beset them like a brilliant storm. Revenge would be satisfying, and mournful as well. She would lament the death of Jukan innocence. Yet they had robbed her people of something more precious. They had summoned the storm upon themselves.
She prayed it would not mean the end of their race, for they were pawns of a genuine evil. Exodus was the true enemy of the Meer. Today she meant to prove it in the fires of combat.
When she was satisfied that the Jukan army had arrayed itself for battle, she lifted her hand and cast a spell. A golden beam shot into the sky. At the signal the Meer called upon the first of their allies.
For untold centuries had the mountains numbered among the Meers' closest friends. The exalted ancestors had shared in crystalline secrets that were hidden from the rest of the world. When the Juka destroyed Dasha's forest home, her people had taken refuge under the welcoming earth. Now they called upon that ancient alliance once more. The mountains answered with a rocky growl.
The Juka silenced when the cliffs began to shake. Then great slabs cracked loose high above the mountain passes. The Juka fled like a receding tide as boulders and rubble smashed atop them. Giant stone pillars split from the mountainsides and fell like thundering hammers. A cloud of dust engulfed the Juka, then the attack vanished into echoes.
The Meer watched silently as the dust rolled away. The Jukan forces assembled at the edge of the landslides. Their numbers were cut by a quarter.
With a peal of rage they challenged their enemy to face them once again.
The second attack was louder than the first. Where the cliffs had grumbled, the earth bellowed as it rose under the Jukas' feet. In a flash did the earthquake race across the valley floor like ripples on a giant pond. Great rifts sheared the ground and swallowed men and buildings. Segments of the city disappeared into swirls of dust and debris. What remained of the Jukan troop formations scattered into chaos and death.
Then from the ragged fissures in the earth flew many dark clouds that poured across the valley. From her high vantage, Dasha flinched at the sight. This was the most nightmarish attack of all. The elders had summoned a host of stinging insects. Their venom struck like poison arrows. They were refugees from the forest, as well, and so their wrath was doubly terrible. Dasha knew no Juka would escape their fury.
She closed her eyes when screams and smoke arose from the ruined city.
But she took a deep breath and steeled herself. The time had come to march on the Juka and finish the morning's work. The city and its fortifications would fall quickly. When she looked out at the great fortress, she saw only spare damage to its walls. There was no doubt that sorcery had saved it from the earthquake. With narrowed eyes she thought, I trust that means you're at home, Exodus.
Around her the ranks of the Meer quietly descended the mountainside. So gentle was their step that the treacherous footing posed no danger. The landslides had left behind high slopes of rubble, creating an easy path to the bleak battlefield. The glow of the warriors' enchantments bathed the valley in magical light. The army of insects drew back from the oncoming glare.
The Jukan soldiers, bloodied, disarrayed, poisoned and devastated, greeted the invaders with dauntless ferocity. The two sides clashed in a chorus of war cries. The earth would drink much more blood before the day had ended.
But Dasha did not join the advance Meer companies. Their purpose was to secure a path to the center of the city. Once this was accomplished, the Lore Masters and Matriarchs would enter the valley and cast the final stroke. Master Adranath had prepared an ancient ritual to seal the defeat of the Juka. Once it was performed, the old sorcerer promised, the threat to the Meer would cease.
Dasha thought better of the Juka than Adranath did. She would not see them destroyed forever. One last time she brought her case before the wizard, as he watched the battle from a high-flung ledge. With a bow she murmured, “Venerable Master, I beg you. Please delay your spell until I have reached Exodus. If we remove his influence, I am confident the Juka will return to their proper role.”
The old man grunted. “Today shall witness the end of the Juka.”
“They have already been punished. Surely they deserve to be freed from Exodus's control, to heal and reflect. The balance between the races --”
“We have been decimated! The old balance has ceased to exist. All that remains is revenge.”
She lowered her tone. “I must respectfully disagree.”
He opened a grimace that chilled her. “Your eyes betray your prejudice. You believe that my mind is addled, that old age has sapped my wisdom. But let me tell you the nature of age, Captain Dasha. Wisdom is an artifact of experience. Wisdom respects the inevitability of change. But the young know only established orders and customs, and so you are reluctant to accept change. This is why the young are trapped in the cycle of reincarnation. Your spirits are not yet confident enough to stand on their own." He regarded her with a disapproving sigh. "You must let go of the past. The Juka are not who they once were. Neither are we. Today the old order is finished.”
She had no answer for the ancient wizard, yet her convictions remained. The Juka were not irredeemable. If she was simply being young and stubborn, the ancestors must judge her accordingly. She conjured the strength to match Adranath's gaze and said, “I shall try to reach Exodus unless you command me otherwise. If I have to do it before you cast your spell, then I respectfully ask to be on my way.”
The grey-furred master twitched his ears. With a frown he muttered, “Do what you must, child. The passing of your soul will be sorrowful indeed. You might have been a great leader, in time.”
“I shall yet be, Master.”
Adranath ignored the boast with a grave expression. Dasha sprang down the mountainside with a prayer to the exalted ancestors: Take Master Adranath among you soon, for his earthbound soul is afflicted with gloom. Perhaps the crystal spires of the afterlife can restore his vigor.
A band of fifty warriors met her at the base of the slope. She led them into the clamorous horror that one hour before had been a city. The ground was ruffled and cracked, buildings lay toppled and burning, the victims of the stinging insects wailed in swollen pain. Yet the Jukan warriors fought on. Quick and brutal were the battles Dasha met. Before she reached the fortress walls, two hundred Juka lay slain in her path. A dozen of her own company had fallen as well.
Before them loomed the mighty fortress, its stones barely marked by the day's terrible events. She gathered her warriors to scale the high wall. Their enchantments still shone in the smoke of war, repelling the arrows of the Juka who manned the parapets. As the Meer started to climb, another light appeared. Dasha did not recognize the spell. So, Exodus, she smiled, you are inside! But what trick do you have for us now? The light seemed to encompass the entire valley. She braced for some effect, when her spine suddenly tingled. The valley was not aglow. She was aglow. The spell was directed at her.
And a moment later she stood in a chamber she presumed was inside the fortress. A ring of Jukan warriors surrounded her, their spears penning her at the center of the floor. They looked unaffected by quakes and insects, save for the largest among them. Warlord Kabur must have returned here from the front lines. His armor was pale with dust from the landslides. His emerald skin Casca.ed with angry stings. Blood painted his massive form. Dasha knew that it was not Jukan blood.
“You are mad to come,” snarled the giant warrior.
“I am here because of your own honor," she replied, "since you left me a weapon in the cave. You gave me life and I thank you for it. And yet you did not cast the spell that reeled me into this room. Where is your lord Exodus? It is he with whom I have business this morning.”
“And I with you," boomed a deep voice. It emerged from the shadows of an alcove. Dasha could not see into the darkness, except for the sparkle of a few gemstones. "Forgive an improper welcome, Captain Dasha, but the day has been a busy one.”
“Surely you know why I have come. You have corrupted the Juka. I mean to restore the old balance between our peoples.”
“Yes, you must save the Juka, but I am not the target you want. There is greater treachery afoot at the hands of your Lore Master Adranath. He seeks to restore a balance, as well. The ritual he intends to perform will erase the Juka from Ilshenar. And Captain Dasha, the Meer shall fall with them. Adranath seeks the tranquility of oblivion for both races. Time runs short for us all.”
And she knew that Exodus spoke the truth, for he had identified the nature of Adranath's despair. Now she understood the Lore Master's statement, All that remains is revenge. Her body shot through with icy panic. The ancient wizard had indeed gone mad. And she was the only Meer who would dare to stop him.
Her tone was sharp and low. “Damn you, sorcerer, for putting this on me! But I'll need help. Come, Warlord Kabur, if you have the courage to stand against a Meer elder.”
The Juka seemed trapped between a frown and a laugh, but he answered by lifting his bloody spear in an abbreviated form of salute.
ミーア(Meer)の軍隊が第二の夜明けのように光り輝きながら、ジュカ(Juka)の都市を見下ろす形で現れた。山の頂上を幾つも越えて、彼らは目映い魔法の後光を纏いながら、複雑に入り組んだこの土地まで膨大な数で静かに、そして確実にやって来た。隆起線から彼らは眼下にある谷を覗った。そこには巨大な要塞に囲まれたグレーの屋根が幾つも見えた。ミーアの集団の輝きの中で、それらの建物は随分と小さく見えた。吹く風は、この夜行性の侵略者に萎縮し、その谷を陰気で静粛な物へと変えた。
しかし、暗黒の軍隊も又、山脈の基地へと集結していた。軍勢に於いてジュカはミーアの六倍あり、それが険しく、高くそびえ立った崖を通る山道に押し寄せながら、都市と斜面との間にある平地に集結していた。無数の盾と槍は戦闘準備を完了していた。カタパルトが弓矢部隊の中心に据えられた。軍旗がジュカの戦いへの飢えの証として、朝日の中で誇らしげに輝いた。
谷の静粛さは、ジュカの軍が囁き、声を出し、そして攻撃開始の前に躊躇っている臆病なミーアに対する苛立ちの怒声をあげるにつれて消え去っていった。
ダーシャ(Dasha)は頂上から、彼らの戦闘意欲の旺盛さに薄笑いを浮かべた。ジュカはその生来の野蛮な性質を越える理由で戦いをした事などなかった。彼らの熱意は子供っぽさと言う点に於いて惹きつけるものがある。しかし、子供と同じで、彼らはその敵を自分達が作り出した事を理解しないのだった。ミーアは光り輝く嵐のようにして彼らを悩ます事になるであろう。復讐は満足をもたらすであろう。同様に陰鬱な気分ももたらすであろう。彼女は罪の無いジュカの死を嘆く事になるであろう。しかし、彼らはミーアからより大切な何かを奪ったのだ。彼らは自分達自身に嵐を呼び込んだのだ。
彼らは黒幕の手先であるに過ぎなく、彼ら種族の滅亡を意味しない事をダーシャは祈った。エクソダス(Exodus)こそミーアの真の敵だった。今日、彼女はそれを戦火の中で証明するつもりだった。
彼女はジュカが戦闘配置についた事を確認すると、腕を上げ呪文を放った。金色の光線が空に撃ち込まれた。それは、ミーアの第一陣への合図だった。
永きに渡り山々はミーアの本当の親友として数え入れられてきた。天上の先祖達は他の世界からは隠された水晶の秘密を共有してきたのだ。ジュカがダーシャの故郷である森を破壊した時、歓迎してくれる大地の下へ避難したのだった。そして今、彼らはその古代からの同盟をもう一度求めた。山々は岩の唸りを以ってそれに応えた。
崖が揺れた時、ジュカは静まり返った。そして、巨大な厚い岩の板が山道の上の方で崩れる音がした。巨岩や瓦礫が頭上に打ちつけられる。彼らは引く潮のように逃げた。巨大な岩の柱が山の側面から剥がれ落ち、雷鳴のハンマーのように崩れ落ちた。土埃の雲がジュカを包み込み、その攻撃はこだまの中へと消えていった。
彼女はその土埃が納まるまで静かに見ていた。ジュカの軍勢が地滑りの後の隅に集まった。その数は四分の一ほど削られていた。
猛烈な怒りと共に、彼らは再びミーアに挑むべく向かって来た。
攻撃の第二波は最初のそれよりも大きな物になった。大地はジュカの足元でそれが隆起する度に大きな音を立てた。崖も崩壊の音をたてていた。一瞬にして地震が巨大な池の波紋の様に谷底全体を揺るがした。深い裂け目が大地を切り裂き、ジュカやその建物を飲み込んだ。都市の断片は埃と瓦礫の渦の中へ消えていった。ジュカの編隊の遺物は混沌と死の中にまき散らかされていた。
そして、崩れた大地の裂け目から、谷間中を満たしていく多くの黒い雲が吹き出した。余りの自らの有利さに、ダーシャはたじろぐ程だった。今までの攻撃の中で最も凄惨なものだった。長老達は針を持つ昆虫の群れを召喚した。その毒液は毒矢の様な効力を発揮した。それらもまた森から避難してきた者であり、それ故に怒りも倍して凄まじいものだった。ダーシャはジュカが一人としてそれらの怒りから逃れる事は出来ないと知った。
彼女は廃墟となった街から叫び声や煙がたち上がって来た時、目を閉じた。
しかし、彼女は深呼吸をして心構えを新たにした。ジュカの街に進軍し、その朝の仕事を終わらせる時がやって来たのだ。都市とその砦はすぐに陥落するであろう。彼女がその巨大な要塞に目を遣った時、要塞の壁に殆どダメージがない事に気が付いた。呪術が地震からそれを守った事は明らかだった。目を細め、彼女は思った。そこに居るのだな、エクソダス。
彼女の周りでは、ミーアの軍勢が山の斜面を駆け降りていた。彼らの歩みはとても静かな物だったので、不安定な足場も危険ではなかった。高く積まれた瓦礫の傾斜の向こうから、荒涼とした戦場への侵入路を作りながら地滑りが起った。戦士の使う魔法の輝きが谷全体を魔法の輝きに浸した。昆虫の軍勢もやって来る光にたじろいだ。
血まみれで混乱をきたし、毒に侵され破滅寸前のジュカの戦士達は侵略者達を不屈の獰猛さで迎えた。両軍が戦争の叫びの混沌とした中で衝突した。その一日が終わる前に大地はより多くの血に浸される事になるであろう。
しかし、ダーシャは仲間の前進に加わらなかった。彼らの目的は都市の中心に至る道を確保する事だった。一旦それが完了すれば、長老達が谷に入り、とどめの一撃を放つであろう。師アドラナス(Adranath)はジュカの敗北を決定づける古代の儀式を準備していた。それが実行されればミーアへの脅威は終わるだろうと、年老いた魔術師は請負った。
ダーシャはアドラナスが考えるよりも、ジュカに希望を持っていた。彼女はどうしてもジュカが永遠に葬り去られる事を望んではいなかった。少し前に彼女は、彼が岩だなから戦いを見ている時に、彼女のその申し立てをその魔術師の前で明らかにした。一礼し、彼女は小さな声で言った。『敬愛する我が師よ、お願いです。私がエクソダスに辿り着くまで、あなたの呪文を延期してください。もし、我々が奴の影響を取り除く事が出来れば、私はジュカが彼らの正しい役割に立ち返ると確信を持っています。』
その老人はうめくように呟いた。『今日、ジュカの終焉を目撃する事になるじゃろう。』
『彼らは既に罰されています。自らを癒し省みる為、エクソダスの支配から解放されるには十分な程だと思います。種族間の均衡は・・・』
『我々は多くの民を失った!古からの均衡はその存在を終えたのじゃ。残ったのは復讐だけじゃ。』
彼女は声の調子を下げ言った。『恐れながら、私は絶対に同意できません。』
アドラナスは顔をしかめ、それは彼女に冷水を浴びせた。『お前の目がお前の先入観を物語っておる。私の思考は乱れ、年齢が私の智慧を奪ってしまったと思っているのじゃろう。しかしな、キャプテン・ダーシャよ、私に年を経る事の理と言う物を語らせてくれ。智慧と言う物は経験の産物じゃ。智慧は変化の必然性を重んじる。しかし、若者は築き上げられた秩序や習慣しか知らず、それ故お前は変化を受け入れる事を躊躇っておるのじゃ。これこそ、若い者が転生の輪に取り込まれてしまう理由なのじゃ。お前の魂はまだ、自身に恃むだけの自信は持ち合わせていないのじゃ。』彼は否定を表す様に溜め息をつき、彼女を見つめた。『過去への執着を捨てよ。ジュカはかつてのジュカではない。我々もまた然り。今、古の秩序は終わるのじゃ。』
彼女は己の確信は捨てていなかったが、その年老いた魔術師に何も言えなかった。ジュカは望みが無い状態ではない。もし、彼女が単に若輩で頑固なだけならば、先祖達は彼女を然るべく評価したに違いない。彼女はアドラナスの凝視に耐え得る力を呼び起こし、言った。『何か他の命令をなさらないのであれば、私はエクソダスの下へ参ります。もしアドラナス様が呪文を唱える前でなければならないなら、どうか私の思う様にやらせて下さい。』
そのグレーの獣毛を身に纏った長老は耳を細かに動かした。そして、眉をひそめて呟いた。『我が子よ、為さねばならぬ事を為すが良い。お前の魂の行く道は実に悲しいものとなるであろう。お前は、いつかは偉大なリーダーとなったじゃろうに。』
『やがてはそうなりましょう、我が師よ。』
アドラナスは重々しい表情で彼女の強気な言葉を無視した。ダーシャは高尚な先祖達に祈りながら山腹を駆け下りた。:彼の地に根差した魂は憂鬱さに支配されてしまいました。ですから、師アドラナスを貴方達の列にすぐにでもお迎えください。来世において、クリスタルの尖塔が彼の活力を回復できるかも知れません。
彼女は傾斜地にある基地で、五十人ほどのジュカ戦士の一団に出くわした。彼女はジュカの都市が1時間前にそうだったような騒々しい恐怖の中へと彼らを叩き込んだ。大地は所々隆起し、亀裂が入り、建物は燃えながら倒壊し、刺の立った昆虫の被害者は腫れ上がるその痛みに泣き叫んでいた。それでもジュカの戦士は戦い続けた。彼女の遭遇した戦いは、速く、残忍な物だった。彼女が要塞の壁に到着する前に、彼女の通ってきた道には二百人のジュカ戦士が動かぬ者となって横たわっていた。彼女の仲間の一団も同様に倒れていった。
それらの前に巨大な要塞がぼんやりと見えてきた。その石垣はその日の悲惨な出来事の面影を殆ど残していなかった。彼女はその高い壁を上る為に戦士を集めた。彼らの魔法は胸壁の守備に就いているジュカの矢を振り払いながら、戦乱の煙の中で今だ光り輝いていた。ミーアが登り始めると、他の光が出現した。ダーシャはその呪文が何なのか解らなかった。エクソダスよ彼女はにやりと笑った。その中だな!だが、何を仕掛けている?その光は谷全体を包み込むかの様だった。彼女は背骨に何かが刺すような痛みを感じ、その魔法がもたらすかも知れない効果に身構えた。谷が光り輝いているのではなかった。彼女だった。その呪文は直接ダーシャに向けられたのだった。
そしてしばらく経って、彼女は要塞の中ではないかと思われる部屋の中に立っていた。ジュカ戦士の輪が、槍で彼女を床の中心に閉じ込めながら、彼女を取り囲んでいた。彼らはその中にいる最大の戦士を除いては、地震や昆虫の被害を受けている様には見えなかった。ウォーロード・ケイバー(Warlord Kabur)は前線からここに戻って来たに違いなかった。彼の鎧は地滑りの土埃から色褪せていた。彼のエメラルドの肌は怒りの刺激からかつての色彩を欠いていた。血が彼の強健な体格を彩っていた。ダーシャはそれがジュカの血でない事を知っていた。
『ここまでやって来るとは気でも狂ったのであろうな。』その巨大戦士は怒鳴るように言った。
『お前の名誉の為にここにいるのだ。』彼女は応えた。『お前が洞窟で私に武器を残していっただろう。お前が私に命を与えてくれた事には感謝する。それに、おまえがこの部屋へ私を引き込む魔法を放ったのではない。お前の主人エクソダスはどこだ?用があるのは彼だ。』
『私はここにいるぞ。』重厚な声が轟いた。それは奥の部屋の影から聞こえてきた。ダーシャは数個のジェムストーンの火花を除いて、その暗闇の中を覗う事は出来なかった。『非礼な招待をお詫びする、キャプテン・ダーシャよ。しかしどうも今日は忙しくてな。』
『お前はきっと私がここに来た理由を知っているであろう。お前がジュカを侵食した。私は我々と、そしてジュカとの間の古からの均衡を回復させるつもりだ。』
『ふむ、お前はジュカを救わねばならぬのであろうが、お前の欲している標的は私ではないぞ。お前の師であるアドラナスの手によって空前絶後の裏切りが進行中なのだぞ。彼も同様に均衡の回復を希求している。彼が実行しようとしている儀式は、イルシェナーからジュカを消し去るであろう。そしてキャプテン・ダーシャよ、ミーアもそれと同じく滅びるのだ。アドラナスは双方の種族にとっての忘却と言う安定を求めているのだ。我々全てにとって時間と言うものは短いものだな。』
彼女は、エクソダスがアドラナスの絶望の本質を言い当てたので、彼が真実を語っていると思った。そして今、知識の師の言葉を理解した。残されたのは復讐あるのみじゃ。彼女は体全体が凍りつくような狼狽に襲われた。老魔術師は本当に気が変になっていたのだ。そして、彼女が彼を止められる唯一のミーアだった。
彼女の口調は鋭く低かった。『畜生、魔術師め、こんな事を押し付けやがって!だけど私には助けが要るんだ。来い、ウォーロード・ケイバー。ミーアの長老に立ち向かう勇気があればの話だがな。』
そのジュカはしかめ面と笑い顔との間で態度を決めかねているように思えたが、彼は略式の礼を以って血のついた槍を手にとり応えた。