Difference between revisions of "UO:2009-03-20: Tales of Ice and Fire"

(Created page with "{{InfoHeader UOFiction | title = Tales of Ice and Fire | author = Calvin Crowner | type = BNN }}<div class="uofiction"> '''Battles are sometimes won with bloodshed. Others ar...")
 
m
 
Line 1: Line 1:
 
{{InfoHeader UOFiction
 
{{InfoHeader UOFiction
 
| title = Tales of Ice and Fire
 
| title = Tales of Ice and Fire
 +
|translation = 氷と炎の物語
 
| author = Calvin Crowner
 
| author = Calvin Crowner
 
| type = BNN
 
| type = BNN
Line 39: Line 40:
  
 
“Our next step is now easy. Onward now to Yew Abby!”
 
“Our next step is now easy. Onward now to Yew Abby!”
 +
 +
==Japanese version==
 +
 +
戦いとその勝利は時に血で贖われ、時に夜明けから夕暮れの間の沈黙で贖われる。百年の平和をもたらす時もあれば、そうでない時もある、今のように。
 +
 +
しばし平穏ならざりし平和の境界域は時に試されるが、時ですらこの平面世界を跨ぐ戦いの傷を癒すことはできない。
 +
 +
今年の春は早かったが、目指す土地を仰ぐばかりで、周囲や乗っているものを気にかけない二人、騎士用の乗用馬ですら耐えられない速さで進む二人には関係が無かった。 ラベンダーの光の中つきすすむ影を見たものは、その二人がテレポートでも使っているに違いない、と思っただろう。 閃光、1リーグ(*1)先へ。また閃光、3リーグ先に。
 +
 +
銀白のクロークからうかがえる細身の体にしては、肩だけ異様に盛り上がっている二人。この距離からでも分かるが、おそらく荷役馬よりも背が高い二人。そして再び夕闇迫るなか光が瞬き、光の加減か、異様な姿が映る。肩で颯爽と動き、けして止まらず、一方を気遣うそぶりすら見せない。太陽より古いその関係、天上でも無いであろうその間柄の二人が、ある目的を持って移動していた。
 +
 +
彼らは立ち止まる。彼らはあまりにも突然その動きを止め、それはまるで息をするものとも思えないほどだった。つまり……そう……停止したのだ。一人が大地があるかどうかを確認するかのようにうずくまると、彼の掌が伸び、目が大地の下を見つめてから、二人の前に広がる地平線を見つめる。
 +
 +
古の言葉がその口から漏れる「Tenpiswo ui wer ouith……」
 +
「私も感じる」とその連れが答える。「傷はここだろう……」
 +
 +
 +
 +
カスカ(Casca)の勝負はもう数週間にも及んでいた。敵の動きは秩序だったものだ。その一手を相手に知らせるのは鳩で、一日ごとに一手すすむのだった。 最新の一手で、カスカはポーンの代わりにナイトを失う羽目になった。不注意か。カスカは考える。悪手だ。 なぜこんな手を打ったのか。何を考えていたのだろう。侵攻と彼の策謀がその決定に影響を与えていたのかも知れない。
 +
 +
あえぎ走りながらスレウォート(Threwort)が駆け込んできた。すぐに注意が彼に向けられる。 彼はカスカに何か言おうとし、手を上げた。
 +
 +
「我が君……」スレウォートはカスカの思索を中断しようとした。
 +
 +
『お前はいったい何をあせっているのだ』カスカは内心の会話に夢中だった。彼の目はまっすぐのびた指の先を辿り、手は何も無い空気をうつろに何かを辿ろうとしている。
 +
 +
スレウォートはかかとを打ちつけた。不意に苛立ったカスカはスレウォートに振り向くと、「何があった?」と尋ねた。
 +
「トランメルの魔法障壁です。我が君。魔法障壁が復活しました。何か緊急事態が発生したらしく、クリムゾンドラゴンが後退しています」
 +
 +
「だが、わしは何も聞いていないぞ。何も言われていない……」
 +
 +
胃が締め付けられる音がする。チェス盤を覗き、まるで鉄と油を甞めたかのように舌は口蓋に張り付く。
 +
 +
「どういうことだ、復活しただと? もちろん復活したのだ!  確かに、全て計画通りだ! これだ、わしが以前喋ったのはこのことだ! 星は直列し、運命は繁栄の歌を、魔法の歌を、そしてマフィンの歌を歌うのだ!」
 +
 +
「次の一手は、ならばたやすいな。 ユーのエンパスアビーに向かうのだ!」
  
 
</div>{{InfoFooter UOFiction| type = BNN}}
 
</div>{{InfoFooter UOFiction| type = BNN}}

Latest revision as of 20:38, 31 May 2017


BNNMasthead.gif
Global Edition


Tales of Ice and Fire / 氷と炎の物語

Author: Calvin Crowner Published: March 20, 2009



Battles are sometimes won with bloodshed. Others are won in the silence between dawn and dusk. And sometimes there is a peace that lasts centuries. This is not one of those times.

Often even the boundaries of an uneasy peace are tested with time. But not even time can heal the wounds of a battle fought between this plane and others.

Spring was early this year. With the eyes of his companion set more on their destination than the means of getting there, the pace they strode would collapse a knight’s steed. Any onlooker would gather that the two shadows moving in the lavender light must be planeshifting to move so quickly. Blink. A league passed. Blink. Three leagues.

Each silver-grey cloak gathered about the massive shoulders of each slender form. At this distance they could have been taller than shire horses. Then again, the light at this time of evening did play tricks on the eyes. They strode shoulder to shoulder, never breaking stride, never checking to see if the other were lagging or tired. They moved with purpose, and as if they’d known each other longer than the sun, or any other thing in the heavens.

They stopped. Their motion coming to an immediate halt seemed not out of place, nor did their breathing seem labored. They … simply … stopped. One crouched as if testing the earth for a place to lay, his palm outstretched his body and eyes set on the ground beneath, and what stretched to the horizon before the pair.

An ancient language swept from one, “Tenpiswo ui wer ouith …”
“I feel it too,” his companion agreed. “The wound is here …”


Casca.had been playing this game for several weeks now. The moves of his opponent were methodical. The pigeon brought one move each day for one player. With the latest, Casca.had lost a knight to a pawn. Sloppy, he thought. Sloppy play. Where was his mind? Perhaps the invasion and all his machinations were having an effect on his decision-making.

Panting, Threwort ran in and brought himself quickly to attention. Opening his mouth to speak Casca.raised his hand.

“My liege …” Threwort tried to interrupt.

“What are you up to?” he spoke to himself. He traced each path of every piece with an extended finger, forming move upon move in thin air.

Threwort rocked on his heels impatiently. Exasperated Casca.turned to Threwort. “What is it?”

“The Trammel Barrier, My Leige. It is restored. The Crimson are falling back, as if they suddenly found more pressing matters.”

“But I didn’t. There was no word to…”

Cascas stomach churned. Looking at the chessboard, his tongue folded against the roof of his mouth, as if tasting iron and oil.

“What do you mean, it’s restored? Of course it’s restored! Certainly, all according to plan. This! This is the era I have spoken of. Our planets are aligned. Our destinies sing of prosperity, magic, and muffins!”

“Our next step is now easy. Onward now to Yew Abby!”

Japanese version

戦いとその勝利は時に血で贖われ、時に夜明けから夕暮れの間の沈黙で贖われる。百年の平和をもたらす時もあれば、そうでない時もある、今のように。

しばし平穏ならざりし平和の境界域は時に試されるが、時ですらこの平面世界を跨ぐ戦いの傷を癒すことはできない。

今年の春は早かったが、目指す土地を仰ぐばかりで、周囲や乗っているものを気にかけない二人、騎士用の乗用馬ですら耐えられない速さで進む二人には関係が無かった。 ラベンダーの光の中つきすすむ影を見たものは、その二人がテレポートでも使っているに違いない、と思っただろう。 閃光、1リーグ(*1)先へ。また閃光、3リーグ先に。

銀白のクロークからうかがえる細身の体にしては、肩だけ異様に盛り上がっている二人。この距離からでも分かるが、おそらく荷役馬よりも背が高い二人。そして再び夕闇迫るなか光が瞬き、光の加減か、異様な姿が映る。肩で颯爽と動き、けして止まらず、一方を気遣うそぶりすら見せない。太陽より古いその関係、天上でも無いであろうその間柄の二人が、ある目的を持って移動していた。

彼らは立ち止まる。彼らはあまりにも突然その動きを止め、それはまるで息をするものとも思えないほどだった。つまり……そう……停止したのだ。一人が大地があるかどうかを確認するかのようにうずくまると、彼の掌が伸び、目が大地の下を見つめてから、二人の前に広がる地平線を見つめる。

古の言葉がその口から漏れる「Tenpiswo ui wer ouith……」 「私も感じる」とその連れが答える。「傷はここだろう……」


カスカ(Casca)の勝負はもう数週間にも及んでいた。敵の動きは秩序だったものだ。その一手を相手に知らせるのは鳩で、一日ごとに一手すすむのだった。 最新の一手で、カスカはポーンの代わりにナイトを失う羽目になった。不注意か。カスカは考える。悪手だ。 なぜこんな手を打ったのか。何を考えていたのだろう。侵攻と彼の策謀がその決定に影響を与えていたのかも知れない。

あえぎ走りながらスレウォート(Threwort)が駆け込んできた。すぐに注意が彼に向けられる。 彼はカスカに何か言おうとし、手を上げた。

「我が君……」スレウォートはカスカの思索を中断しようとした。

『お前はいったい何をあせっているのだ』カスカは内心の会話に夢中だった。彼の目はまっすぐのびた指の先を辿り、手は何も無い空気をうつろに何かを辿ろうとしている。

スレウォートはかかとを打ちつけた。不意に苛立ったカスカはスレウォートに振り向くと、「何があった?」と尋ねた。 「トランメルの魔法障壁です。我が君。魔法障壁が復活しました。何か緊急事態が発生したらしく、クリムゾンドラゴンが後退しています」

「だが、わしは何も聞いていないぞ。何も言われていない……」

胃が締め付けられる音がする。チェス盤を覗き、まるで鉄と油を甞めたかのように舌は口蓋に張り付く。

「どういうことだ、復活しただと? もちろん復活したのだ!  確かに、全て計画通りだ! これだ、わしが以前喋ったのはこのことだ! 星は直列し、運命は繁栄の歌を、魔法の歌を、そしてマフィンの歌を歌うのだ!」

「次の一手は、ならばたやすいな。 ユーのエンパスアビーに向かうのだ!」