Difference between revisions of "UO:2010-09-30: Joy and Rain"
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+ | |translation = 享楽と雨 | ||
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The intermittent patter of rain fell through the street. Tufts of dust rising and immediately settling as the lanes darkened with the passage of the clouds … a separate set of footsteps headed away from the crowd, and was washed away as the clouds emptied in a torrent. | The intermittent patter of rain fell through the street. Tufts of dust rising and immediately settling as the lanes darkened with the passage of the clouds … a separate set of footsteps headed away from the crowd, and was washed away as the clouds emptied in a torrent. | ||
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+ | ==Japanese version== | ||
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+ | アーチェリーの的がある中庭を、涼しい風が吹き抜けていた。女王とブリタニア王室家政長官は、たった今届いたばかりの愛慕の情がこめられた羊皮紙を広げるところだ。端の部分が破れないように気をつけながら、農具をかたどった封蝋をドーン(Dawn)は砕いた。 | ||
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+ | たれこめる雲に遮られ、太陽はぼんやりと輝いていた。手紙の内容と雨、双方への期待で彼女の心は高鳴った。 | ||
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+ | 時間をかけて丁寧に書かれた夫の手書き文字を、ドーンは微笑みながら読み進めた。いつものように、彼の手紙は元気をくれる。ドーンは小さな荷物をまとめながら、共有農場への、日数こそ短いが喜ばしい帰省に思いを巡らせていた。 | ||
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+ | 去年の冬に補修した柵は、よく持ちこたえているよ。君なしでこの猛獣たちと過ごすだなんて、あと一日だってごめんだね。君の匂いの方がずっと素敵さ。 | ||
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+ | ドーンは笑みを浮かべた。いかにも夫のオルス(Ors)らしい。優しくて、善意に満ちた人。彼の純真さは、いつだってドーンに元気を与えてくれた。 | ||
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+ | 二日前に酒場でちょっとした口論があってね。ミージェン(Miegen)という男と僕が二人ほどぶちのめしたら、残りの奴らは逃げて行ったよ。 | ||
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+ | ドーンは眉をひそめた。愛するオルスが変なことに巻き込まれていないといいのだが。彼はとても実直で、もし裸の人を見かけたら、がっちりとした体からシャツを脱いで与えたり、自分の羊から毛を刈り取って差し出したりするのを厭わない人物なのだ。他人をすぐに信用してしまう彼の性格につけこもうとする者も後をたたず、この数年間でドーンが話し合う羽目になった商人の数は数人どころではない。 | ||
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+ | 賭け事には詳しいかい? そっちに居る間に兵士と賭け事をしているのは知っているけど、君はルールを教えてくれたことはないからね。よくわからないけど、ビギナーラック、とか言うのかい? ミージェンは、それが凄いんだって言うんだよ。 | ||
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+ | ドーンは荷物をひっ掴み、手紙を放りだすなり、居室から脱兎のごとく走り出した。ひらりと落ちた手紙が床に触れた時、すでに彼女はクロークを身に着けていた。 | ||
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+ | 彼女が通路を駆け抜けると、乾ききった大地に雨粒が落ち始めた。 | ||
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+ | オルスは石壁に向かってサイコロを放り投げた。黒い点が描かれた面が砂上で静止すると、周囲で喜びや落胆のどよめきがおこる。不承不承といった様子で掌から掌に賭け金が渡されていく。昼過ぎの熱気の中、勝者はさらに追い打ちをかけるように敗者の日焼けした背中を叩いてからかうのだった。 | ||
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+ | 新しい友達の幸運に、ミージェンは歓声をあげた。「今日はツイてるじゃないか、オルス。どんどん運が向いてきてるぜ」 | ||
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+ | オルスはその称賛を無視し、次の勝負に気持ちを集中させた。群衆の野次でどよめきが起きると微熱が出て頭痛もしたが、それも徐々に遠く弱くなっていった。オルスに聞こえたのは、聞いていてイライラするようなくだらない激励だけだった。決して声色が似ているわけではないが、彼の耳にはまるで「父の声のように」届いた。 | ||
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+ | 勝負道具を渡されて彼が路地で卑屈に腰をかがめるようになってから、何日も過ぎただろうか? 彼はそれまで賭け事など全くしたことはなかった。当初、ユーからの彼の旅は平穏無事だった。あるとき、オフィディアンへの反抗運動についてガードの一人と話していると、突如として同意見の男女に取り囲まれてしまった。その時彼は、久しく感じることのなかった仲間意識を覚えた。自分の居場所を見つけた。そう彼は思った。 | ||
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+ | 頭上から冷たいエールを浴びせられ、オルスは一瞬で我に返った。口笛やあざけるようなつぶやきが群衆の間に広がる。この中断に群衆の雰囲気はかなり悪くなりかけたが、次のゲームを知らせる声で一転した。 | ||
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+ | 「次は『牧羊杖と松葉杖』ゲームだ!」 | ||
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+ | 群衆は立ちあがり、オルスとミージェンも腰を上げた。オルスは上の空で乾ききった砂の中に最後の一投を投じた。もう二度とそのサイコロには触れたくはなかった。舞い上がった砂埃が落ちつくと、負けの出目だったことがわかった。何百回も投げ続けて初めての負けだ。ミージェンは肩をすくめて友に声をかけた。「おやおや。ま、今のは本番じゃないからな。さぁ行くぜ」 | ||
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+ | オルスはうなずいた。不安が胸中にうずまき、胃は不快感に満ちあふれた。最後にもう一度、例のサイコロをじっと見つめる。路地を抜けて吹いてきた微風に身ぶるいする。待ち望まれていた天候の変化だ。雨か? | ||
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+ | ミージェンは勝利者を抱きしめた。にやりと笑いながらミージェンは友の肩を抱いて帰路についたが、ちょうど農夫の背中のあたりでむき出しになったその腕に、一瞬ではあるが選民の印があらわになった。 | ||
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+ | 断続的な雨音が通りに響く。舞い上がる一団の埃は、通りの上空を雨雲が這うとすぐに落ちついた。集団から離れていく一組の足跡は洗い流され、土砂降りの雨の中に雲とともに消えた。 | ||
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Latest revision as of 20:51, 31 May 2017
A cooling wind had settled over the courtyards and archery buttes. The matriarch and steward of Britannia unrolled the freshly deliver parchment with unveiled adoration. Breaking the wax seal of farmer’s plowshares, Dawn was careful not to tear the edges.
The sun dimmed behind darkening clouds, and her heart lifted with the contents of the correspondence as well as the promise of rain.
Dawn smiled reading the slow, deliberate hand of her husband’s handwriting. The letter lifted her spirits as always. She had packed sparingly, knowing her visit back to the shared homestead would be a brief but welcome break.
The fence is holding up nicely after the patches last winter. I don’t think I can handle one more day with these ugly beasts without your face to look on. You smell so much better.
Dawn smiled. That was her Ors. Gentle and well-intentioned. He never failed lifting her spirits with his simplicity.
There was a row in the tavern a couple nights ago. A bloke named Miegen and me bashed a couple heads and the rest found they had better things to do somewhere else.
Dawn cringed. She hoped her dear Ors had not fallen in with a bad lot. He was the loyal kind who was willing to give you the shirt from his broad and capable shoulders or go so far as to sheer one of his own sheep for wool if you were bare. Over the years she had to take time to speak with more than a few merchants who would take advantage of his trusting nature.
What do you know about gambling? I know you played with your soldiers when away, but you never explained the rules. Miegen said something about filthy luck of a beginner?
Dawn sprinted from her chambers grabbing her bag, and letting the letter slip to the floor. Her cloak was on her shoulders before the page hit the floor.
Drops of rain hit the parched earth as her running steps pressed through the hallways.
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Ors tossed the dice against the stone wall. Fists and curses rose as the dark dots settled in the sand. Bets exchanged between the reluctant palms of the gathering. Backs were slapped, offering insult to sunburned injury in the heat of the early afternoon
Miegen cheered with his new friend’s fortune. “Seems your day and fortune are improving, Ors”
Ors shrugged off the praise focusing his mind on the task at hand. His skull ached with a slight fever as the din of the crowd jeered and faded into the distance. All Ors heard was the dull encouragement of a familiar rasp against his ear. He couldn’t place the timbre or resonance but he knew it sounded “fatherly.”
Had days passed since he crouched in this alley and been handed the tools of chance? He hadn’t gambled before. His travel from Yew had been uneventful. He’d spoken to one of the guards about uprisings against the Ophidian, and was suddenly surrounded by like-minded men and women. He’d found a brotherhood that seemed sorely missing these days. He felt accepted.
In a sudden rush, his mind was pulled back to reality and his head doused with a cool wave of ale falling on his shoulders. Whistles and mocking grumbles spread through the gathering. The crowd almost turned sour with the interruption until the news rose …
“There’s a game opening up the “Cane and Crutch!”
Ors and Miegen rose following the throng. Ors pitched the dice absently one last time into the still-parched sand. He wouldn’t be touching these particular dice again. The dust settled revealing the first losing toss in hundreds of throws. Miegen shrugged offering to his friend, “Oh well, at least it wasn’t for money that time! Let’s go.”
Ors nodded. His stomach turned, an uneasiness pushing through his chest, staring at the dice one last time. He shivered feeling a breeze slip through the alley, a welcomed and thrilling change to the weather of late. Rain?
Miegen wrapped his arm around the victor of chance. He grinned warmly as his forearm became exposed behind the farmer’s back, the mark of The Chosen unveiled briefly as they moved through the street.
The intermittent patter of rain fell through the street. Tufts of dust rising and immediately settling as the lanes darkened with the passage of the clouds … a separate set of footsteps headed away from the crowd, and was washed away as the clouds emptied in a torrent.
Japanese version
アーチェリーの的がある中庭を、涼しい風が吹き抜けていた。女王とブリタニア王室家政長官は、たった今届いたばかりの愛慕の情がこめられた羊皮紙を広げるところだ。端の部分が破れないように気をつけながら、農具をかたどった封蝋をドーン(Dawn)は砕いた。
たれこめる雲に遮られ、太陽はぼんやりと輝いていた。手紙の内容と雨、双方への期待で彼女の心は高鳴った。
時間をかけて丁寧に書かれた夫の手書き文字を、ドーンは微笑みながら読み進めた。いつものように、彼の手紙は元気をくれる。ドーンは小さな荷物をまとめながら、共有農場への、日数こそ短いが喜ばしい帰省に思いを巡らせていた。
去年の冬に補修した柵は、よく持ちこたえているよ。君なしでこの猛獣たちと過ごすだなんて、あと一日だってごめんだね。君の匂いの方がずっと素敵さ。
ドーンは笑みを浮かべた。いかにも夫のオルス(Ors)らしい。優しくて、善意に満ちた人。彼の純真さは、いつだってドーンに元気を与えてくれた。
二日前に酒場でちょっとした口論があってね。ミージェン(Miegen)という男と僕が二人ほどぶちのめしたら、残りの奴らは逃げて行ったよ。
ドーンは眉をひそめた。愛するオルスが変なことに巻き込まれていないといいのだが。彼はとても実直で、もし裸の人を見かけたら、がっちりとした体からシャツを脱いで与えたり、自分の羊から毛を刈り取って差し出したりするのを厭わない人物なのだ。他人をすぐに信用してしまう彼の性格につけこもうとする者も後をたたず、この数年間でドーンが話し合う羽目になった商人の数は数人どころではない。
賭け事には詳しいかい? そっちに居る間に兵士と賭け事をしているのは知っているけど、君はルールを教えてくれたことはないからね。よくわからないけど、ビギナーラック、とか言うのかい? ミージェンは、それが凄いんだって言うんだよ。
ドーンは荷物をひっ掴み、手紙を放りだすなり、居室から脱兎のごとく走り出した。ひらりと落ちた手紙が床に触れた時、すでに彼女はクロークを身に着けていた。
彼女が通路を駆け抜けると、乾ききった大地に雨粒が落ち始めた。
オルスは石壁に向かってサイコロを放り投げた。黒い点が描かれた面が砂上で静止すると、周囲で喜びや落胆のどよめきがおこる。不承不承といった様子で掌から掌に賭け金が渡されていく。昼過ぎの熱気の中、勝者はさらに追い打ちをかけるように敗者の日焼けした背中を叩いてからかうのだった。
新しい友達の幸運に、ミージェンは歓声をあげた。「今日はツイてるじゃないか、オルス。どんどん運が向いてきてるぜ」
オルスはその称賛を無視し、次の勝負に気持ちを集中させた。群衆の野次でどよめきが起きると微熱が出て頭痛もしたが、それも徐々に遠く弱くなっていった。オルスに聞こえたのは、聞いていてイライラするようなくだらない激励だけだった。決して声色が似ているわけではないが、彼の耳にはまるで「父の声のように」届いた。
勝負道具を渡されて彼が路地で卑屈に腰をかがめるようになってから、何日も過ぎただろうか? 彼はそれまで賭け事など全くしたことはなかった。当初、ユーからの彼の旅は平穏無事だった。あるとき、オフィディアンへの反抗運動についてガードの一人と話していると、突如として同意見の男女に取り囲まれてしまった。その時彼は、久しく感じることのなかった仲間意識を覚えた。自分の居場所を見つけた。そう彼は思った。
頭上から冷たいエールを浴びせられ、オルスは一瞬で我に返った。口笛やあざけるようなつぶやきが群衆の間に広がる。この中断に群衆の雰囲気はかなり悪くなりかけたが、次のゲームを知らせる声で一転した。
「次は『牧羊杖と松葉杖』ゲームだ!」
群衆は立ちあがり、オルスとミージェンも腰を上げた。オルスは上の空で乾ききった砂の中に最後の一投を投じた。もう二度とそのサイコロには触れたくはなかった。舞い上がった砂埃が落ちつくと、負けの出目だったことがわかった。何百回も投げ続けて初めての負けだ。ミージェンは肩をすくめて友に声をかけた。「おやおや。ま、今のは本番じゃないからな。さぁ行くぜ」
オルスはうなずいた。不安が胸中にうずまき、胃は不快感に満ちあふれた。最後にもう一度、例のサイコロをじっと見つめる。路地を抜けて吹いてきた微風に身ぶるいする。待ち望まれていた天候の変化だ。雨か?
ミージェンは勝利者を抱きしめた。にやりと笑いながらミージェンは友の肩を抱いて帰路についたが、ちょうど農夫の背中のあたりでむき出しになったその腕に、一瞬ではあるが選民の印があらわになった。
断続的な雨音が通りに響く。舞い上がる一団の埃は、通りの上空を雨雲が這うとすぐに落ちついた。集団から離れていく一組の足跡は洗い流され、土砂降りの雨の中に雲とともに消えた。