Difference between revisions of "UO:2001-10-04: The Last Hope"

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誰に聞かれても構わない。苛立ちを隠せないそのガーゴイルは壊れたピックアクスをトンネルの壁に投げつけた。三日三晩掘り続け、彼の体力はその斧と同様に疲れきっていたのだ。トンネルの壁に背中をもたれ、自分自身を落ちつけようとしていた。
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床をぼんやりと見ているうちに、彼の思いは、残してきた物へと移っていくのであった。彼らはその過酷な運命には似合わない、気のいい人種だった。だが、思いつく限り人生とはこんな物だった。征服前の時代については長老のガーゴイルたちしか知らないのだ。今となっては、そんな時代はまるで寓話のようなものであり、自由な人生など彼には想像を超えた物なのだ。
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自由なんてありはしないのだ!彼はひどく深刻に考えた。あるとすれば、力のあるものだけのための物だと。しかし、すぐにそのようなことを考えた自分を呪った。そして開いた手のひらにこぶしを打ちつけると一人唸った。違う!もう一度故郷を取り戻す方法があるはずだ。彼は本来であれば幸せであるはずの人生をこんな物にしたままにしておきたくはなかったのだ…。
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彼と同様に穴を掘るものたちがいることも彼は知っていた。脱出への希望を抱きながら、救助の希望を抱きながら…。その昔、追手を逃れて別の地へ渡った仲間たちがいることも知っていた。コントローラーたちの会話を盗み聞きしたところによれば、奴らはどこかの地で敵と戦っているらしい。汚らわしい生き物と目されているその敵を自分の兄弟たちであるとは考えていなかったが、それでもモンスターとして富と名声のために遠い地で虐殺されているのだ…。
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選択肢など無い、何かしなければならない。それこそが最後の望みだった。
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リーダー達は、無限の広さを持っているとも思われる山々をつらぬく道が見つかることを期待しながら、特定の場所を掘るためにガーゴイルたちの小さな集団を組織していた。強い羽根があるにもかかわらず、いかなるガーゴイルも山頂を超えることはできなかった。かつてごく少数の者が挑戦したが、帰ってくることは無かったのだ。過去のいくつかの挑戦から、ガーゴイル達は全員それが無理であることを悟っていた。山に吹く風は彼らの命を奪っていってしまったが、少なくともその者たちは今自由であろう。ガーゴイルは小さな笑みを浮べ、その勇敢な、向こう見ずな友人に静かな祈りを捧げるのであった。
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彼はたった数日前まで、彼と共に穴を掘ってきた友人達のことを思い出していた。彼らはコントローラーに捉えられたのだ。しかし、幸いなことにコントローラーの下僕達は洞窟の入口を見つけるには至らなかった。ガーゴイル達はどんな運命が待っているか分かっていたし、その運命について考えると身震いした。彼らは恐らく町に連れ戻され、そして誰であるか、何のためにそこにいるかさえ分からない存在にされてしまうのである。下僕達はてきぱきとその仕事を行う。’再教育’(彼らはそう呼ぶのだが)されたいかなるガーゴイルも、以前の状態に戻ることは無い。彼らは今となっては、喜んでいかなる命令にも従う忠実なコントローラーの軍隊の戦士であり、何のためらいも無く他のガーゴイルを殺すであろう。
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そんなことはガーゴイルへのプライドへの究極の侮辱である、そんな風にそのガーゴイルは考えていた。しかし、このような時代にこそ、そのプライドも飲みこんでおかなくてはならない。ガーゴイル達は何度も都市の奪還を試みたが、いったんメイジ達が彼らの親類を使って攻撃を仕掛けると、ガーゴイル達には、なす術が無かった。そのガーゴイルは先の戦いを思い出す度に、その表情は硬くなる。
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今でも忘れることはできない。彼は3人の親類を殺してしまったという嫌悪の念に常に駈られているのだ。しかし、もはや手のつけられる状態にではなかった。彼らの苦しみから解放してやるにはそれしか選択肢がなかったのだ。そのことはいまだに彼の心を痛めつけ、怒りで一杯にするのだった…。
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かつての高貴なガーゴイルの街に、まるで昔から自分達の物であったかのように居座っているコントローラーたちのことを想像すると、彼の怒りは強くなった。掃き清められた階段、美しい彫刻、大理石の道、そして忘れられないくらい美しい塔。これらは全てガーゴイルの物であり、あの薄汚い生物の物などではなかった。拘束から逃れるために常に隠れて暮らし、荒野の中で育ったので、彼は本当の故郷としてのその街を知らなかった。しかし、心で、魂で、彼はその不思議な街が自分達の住むべき所であると感じていた。
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囚われの身となっている彼の親類、赤いローブのメイジ達に荒らされたかつての美しい都市、主人と呼ばれるもののために意志の無い雄蜂にまでおとしめられた誇り高いガーゴイル達に残された物、全て彼には耐えられない物であった。
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彼は立ち上がり、そしていままで掘ってきた壁を握りこぶしで強く叩いた。突然、岩が唸るような音を立て、彼は驚いて飛び退いた。壁が崩れると眩しい陽光が注ぎ始め、その眩しさに彼は目に手を当てなくてはならなくなった。そのガーゴイルは忘れ去られた土地への入り口を前に呆然と立ちすくんだ。余りにも多くの感情に満たされたために、呆然と立ちすくむことしか出来なかった。
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トンネルは貫通した。しかし、助けは到着するのであろうか…。
  
 
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Latest revision as of 09:28, 31 May 2017


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Global Edition


The Last Hope / 最後の希望

Author: Unknown author Published: October 4, 2001



The frustrated gargoyle threw the broken pickax against the tunnel wall, not caring who heard the sound. He had been digging for over three days now, and his strength, like the pickax, was exhausted. He slumped against the tunnel wall and tried to calm himself.

As he stared blankly at the floor, his thoughts turned to those he had left behind. They were good beings who did not deserve their fate. Life had been like this for as long as he could remember. Only the eldest of the gargoyles remembered the time before the conquering. Those stories almost sounded like a child’s tale now, the very idea of a free life so far beyond his comprehension.

There was no such thing, he thought bitterly, only those with power can truly be free. He cursed immediately for even thinking that way and punched his hand into his open palm. No! There had to be a way to reclaim their home. He would not let his kind live like this.

There were others, he knew, digging like him. Hoping to find a way out. Hoping to find help. They had overheard the controller’s talk of fighting an enemy, and the few gargoyles who had evaded capture figured that any enemy of these foul beasts might be an ally to the gargoyles. But they had also learned how gargoyles in these other lands were perceived… as monsters to be slaughtered for treasure and fame. They had no choice, though. Something had to be done, and this was the last hope.

The leaders had organized small bands of gargoyles to dig in specific locations, hoping to find a way through the seemingly infinite expanse of mountains. Despite their strong wings, no gargoyle could fly high enough to break past the impossibly high peaks. Those few that tried had never returned. The gargoyles sometimes hoped that maybe one had made it across, but they all knew better. The mountain winds had claimed them, but at least now they were free. The gargoyle allowed himself a small smile and said a silent prayer for those brave, if foolhardy, friends.

He remembered his other friends, the four who had been digging with him only a few days ago. They had been caught by the controllers, but thankfully the master’s lackeys had not found the cave entrance. The gargoyle knew what fate awaited them and shuddered at the thought. They were probably already back in the city, no doubt unaware of who they were or what they stood for. The lackeys were efficient with their work. No gargoyle who had been “re-educated”, as they called it, had ever been restored to his previous state. They were now warriors in the army of the controllers, willing and ready to obey any command, and ready to kill another gargoyle without a moment’s remorse.

The ultimate insult to the pride of a gargoyle, he thought bitterly.

But that pride had to be swallowed in times such as this. The gargoyles had tried many times to retake their city, but once the mages began using their own kin against them, the battles gained the gargoyles nothing. The gargoyle grimaced as he recalled the last battle, remembering the revulsion he had felt as he’d personally slain three of his own kin. He knew he had been given no choice, that his fellow gargoyles had been beyond help, that he had done the only thing he could have to save them from their torment. But still it pained and angered him.

He pictured the controllers, living in the once proud gargoyle city as if it was their own home, and his anger intensified. That city, with its sweeping staircases, beautifully carved stone, marble paths, and impressive towers should belong to the gargoyles, not these foul creatures. He had never known the city as his true home, having grown up in the wilderness, constantly hiding from capture. But in his heart, in his soul, he knew that that wondrous city was where he and his kin were meant to live.

Picturing his own kin in chains, the once beautiful city infested with red robed mages, and what was left of the proud gargoyle race reduced to mindless drones for the one they called the master, was more than he could bear. The gargoyle stood and pounded his fist powerfully into the wall where he had been digging. He jumped back as he heard the stones groan suddenly, and then had to shield his eyes as the wall fell away, opening into the bright sunlight. The gargoyle stood staring, stupefied, at the new entrance to his once forgotten land, too many emotions filling him to make another move.

The tunnel was complete. But would help arrive?




誰に聞かれても構わない。苛立ちを隠せないそのガーゴイルは壊れたピックアクスをトンネルの壁に投げつけた。三日三晩掘り続け、彼の体力はその斧と同様に疲れきっていたのだ。トンネルの壁に背中をもたれ、自分自身を落ちつけようとしていた。

床をぼんやりと見ているうちに、彼の思いは、残してきた物へと移っていくのであった。彼らはその過酷な運命には似合わない、気のいい人種だった。だが、思いつく限り人生とはこんな物だった。征服前の時代については長老のガーゴイルたちしか知らないのだ。今となっては、そんな時代はまるで寓話のようなものであり、自由な人生など彼には想像を超えた物なのだ。

自由なんてありはしないのだ!彼はひどく深刻に考えた。あるとすれば、力のあるものだけのための物だと。しかし、すぐにそのようなことを考えた自分を呪った。そして開いた手のひらにこぶしを打ちつけると一人唸った。違う!もう一度故郷を取り戻す方法があるはずだ。彼は本来であれば幸せであるはずの人生をこんな物にしたままにしておきたくはなかったのだ…。

彼と同様に穴を掘るものたちがいることも彼は知っていた。脱出への希望を抱きながら、救助の希望を抱きながら…。その昔、追手を逃れて別の地へ渡った仲間たちがいることも知っていた。コントローラーたちの会話を盗み聞きしたところによれば、奴らはどこかの地で敵と戦っているらしい。汚らわしい生き物と目されているその敵を自分の兄弟たちであるとは考えていなかったが、それでもモンスターとして富と名声のために遠い地で虐殺されているのだ…。

選択肢など無い、何かしなければならない。それこそが最後の望みだった。

リーダー達は、無限の広さを持っているとも思われる山々をつらぬく道が見つかることを期待しながら、特定の場所を掘るためにガーゴイルたちの小さな集団を組織していた。強い羽根があるにもかかわらず、いかなるガーゴイルも山頂を超えることはできなかった。かつてごく少数の者が挑戦したが、帰ってくることは無かったのだ。過去のいくつかの挑戦から、ガーゴイル達は全員それが無理であることを悟っていた。山に吹く風は彼らの命を奪っていってしまったが、少なくともその者たちは今自由であろう。ガーゴイルは小さな笑みを浮べ、その勇敢な、向こう見ずな友人に静かな祈りを捧げるのであった。

彼はたった数日前まで、彼と共に穴を掘ってきた友人達のことを思い出していた。彼らはコントローラーに捉えられたのだ。しかし、幸いなことにコントローラーの下僕達は洞窟の入口を見つけるには至らなかった。ガーゴイル達はどんな運命が待っているか分かっていたし、その運命について考えると身震いした。彼らは恐らく町に連れ戻され、そして誰であるか、何のためにそこにいるかさえ分からない存在にされてしまうのである。下僕達はてきぱきとその仕事を行う。’再教育’(彼らはそう呼ぶのだが)されたいかなるガーゴイルも、以前の状態に戻ることは無い。彼らは今となっては、喜んでいかなる命令にも従う忠実なコントローラーの軍隊の戦士であり、何のためらいも無く他のガーゴイルを殺すであろう。

そんなことはガーゴイルへのプライドへの究極の侮辱である、そんな風にそのガーゴイルは考えていた。しかし、このような時代にこそ、そのプライドも飲みこんでおかなくてはならない。ガーゴイル達は何度も都市の奪還を試みたが、いったんメイジ達が彼らの親類を使って攻撃を仕掛けると、ガーゴイル達には、なす術が無かった。そのガーゴイルは先の戦いを思い出す度に、その表情は硬くなる。

今でも忘れることはできない。彼は3人の親類を殺してしまったという嫌悪の念に常に駈られているのだ。しかし、もはや手のつけられる状態にではなかった。彼らの苦しみから解放してやるにはそれしか選択肢がなかったのだ。そのことはいまだに彼の心を痛めつけ、怒りで一杯にするのだった…。

かつての高貴なガーゴイルの街に、まるで昔から自分達の物であったかのように居座っているコントローラーたちのことを想像すると、彼の怒りは強くなった。掃き清められた階段、美しい彫刻、大理石の道、そして忘れられないくらい美しい塔。これらは全てガーゴイルの物であり、あの薄汚い生物の物などではなかった。拘束から逃れるために常に隠れて暮らし、荒野の中で育ったので、彼は本当の故郷としてのその街を知らなかった。しかし、心で、魂で、彼はその不思議な街が自分達の住むべき所であると感じていた。

囚われの身となっている彼の親類、赤いローブのメイジ達に荒らされたかつての美しい都市、主人と呼ばれるもののために意志の無い雄蜂にまでおとしめられた誇り高いガーゴイル達に残された物、全て彼には耐えられない物であった。

彼は立ち上がり、そしていままで掘ってきた壁を握りこぶしで強く叩いた。突然、岩が唸るような音を立て、彼は驚いて飛び退いた。壁が崩れると眩しい陽光が注ぎ始め、その眩しさに彼は目に手を当てなくてはならなくなった。そのガーゴイルは忘れ去られた土地への入り口を前に呆然と立ちすくんだ。余りにも多くの感情に満たされたために、呆然と立ちすくむことしか出来なかった。

トンネルは貫通した。しかし、助けは到着するのであろうか…。